
電力マン→三菱ケミカルへ、転職後に9資格を取得。39歳で挑んだ異業種転職のリアル
社長表彰を受け、国家規模のプロジェクトにも携わった電力会社の社員が、39歳で異業種への転職を決断しました。転職先は、三菱ケミカル。
「お客さまの顔が見える仕事がしたかった」。その思いから飛び込んだ新天地では、入社後は9つの資格を取得し、現在は工場のライフラインを支えています。
なぜ安定したキャリアを離れたのか。異業種転職の先に見つけた仕事のやりがいとは。39歳で挑んだ転職のリアルに迫ります。
Y・Yさん(仮名)
三菱ケミカル株式会社 製造部 動力課
電力会社に新卒入社し、変電所保守管理・需給運用など電力インフラの中枢を担う。2023年3月に三菱ケミカルへ転職。現在は工場内のユーティリティ(電気・蒸気・水・空気)設備の更新・維持管理を担うチームのリーダーとして活躍中。

社長表彰を受けた後、なぜ転職を考えたのか
Q:これまでのご経歴を教えてください
2006年に電力会社に新卒入社しました。最初は、変電所の保守管理や電力系統の監視業務を担当し、停電や雷などの事故発生時には、電気を別ルートへ切り替える復旧対応などを3交代勤務で行っていました。
その後は需給運用部門へ異動し、需要と供給のバランスを保つため、発電所の稼働を24時間体制で調整する業務を担当しました。
その後、全国規模で電力の安定供給を支える機関への出向を経験しました。経済産業省も関与する国家規模のプロジェクトです。全国の電力会社から選ばれた数名だけが出向できる場所でした。
出向から戻った後は、全国の電力会社9社が集まる需給調整市場の制度検討プロジェクトに参画しました。市場運用の効率化によって全国で10億円以上のコスト削減を実現し、社長表彰もいただきました。

Q:社長表彰を受けるほどの実績を上げていたのに、なぜ転職を考えたのですか
実は、社長表彰をいただいて、若干燃え尽きたところがあったんです。40歳手前になって、ふと立ち止まって、このまま40歳以降のキャリアを考えた時に、もっと面白いことはないかなと思うタイミングがあって。
ちょうど近くの知り合いが転職活動をしていて、いろんな会社の求人を見せてもらったんです。それに興味を持ち、何も決まっていないのに、課長に『転職活動してみていいですか』と直談判しました。最初は本気で転職するつもりはなく、多分、年齢が年齢なので断られると思うし、そうしたら諦めもついて、やはり今の会社で頑張るしかないと思えるはず、と考えていたんです。リフレッシュ的な意味合いでした。
転職にあたって、条件は3つだけ。富山エリアであること、収入を落としたくないこと、これまでの経験や資格を活かしたいこと。それだけを条件にアンドプロに相談したら、三菱ケミカルを紹介していただいたんです。
Q:三菱ケミカルを選んだ決め手は何でしたか
最初は、電力と三菱ケミカルって全然関係なさそうだなと思ったんですよ。でも、アンドプロのコンサルタントが企業と密にやりとりしてくれて、どんな業務内容なのか、事前に詳細にヒアリングしてくれていました。
すると、富山事業所内の各工場に電気・蒸気・水などのインフラを供給する動力課という部署だということがわかって。規模は違うけど、インフラを供給するという意味では、電力会社での仕事と本質的に近いと感じました。電気の知識も活かせると思いましたし、真剣に調べてみようと。
転職活動はトントン拍子で、約2ヶ月で決まりました。並行して1社受けていたんですが、三菱ケミカルの最終面談の時点でもう1社はまだ一次試験の段階でした。そのスピード感にも、いい印象を持ちました。

「お邪魔します」の姿勢で、工場のライフラインへ
Q:入社してみて、ギャップはありましたか
ギャップはなかったですね。工場が近いので安全文化はしっかりしているだろうと思っていましたが、その通りでした。電力会社も安全には非常に厳しいので、そこは違和感なく馴染めました。労働時間も前職とあまり変わらず、時間帯が少し早い時間にシフトしたくらいです。
ただ、苦戦したのは”電気以外”の部分です。電気の専門家としての自負はあって入社したものの、変電所だけを見ていればいいのは最初だけで、すぐにボイラー、ポンプ、コンプレッサー、冷凍機、純水設備など、電気以外の設備も全部担当することになって。電気以外は全部わからない状態からのスタートでした。
なので、自宅ではわからないところを勉強して、資格も取りました。
Q:どんな資格を取ったんですか?
入社後に9つの資格を取りましたね。ボイラー技士(2級・1級)、高圧ガス製造保安責任者(冷凍機械第2種)、危険物取扱者(甲種)、消防設備士(甲種第1類・第4類)、衛生管理者(第1種)、電気主任技術者(第1種)、自主保全士(1級)です。
迷惑をかけたくないという気持ちが強かったので、自分から積極的に勉強しました。
チームに入る時も、超低姿勢で『お邪魔します』というスタンスで臨みました。後から入ってリーダーになるというのは、もともといたメンバーからすると複雑だと思うんですよ。電力会社出身というと偉そうなイメージを持たれがちなので、とにかく『何もわからないので、何かあったら助けてください』というスタンスで入っていきました。
3交代の現場メンバーは、最初、見た目が結構怖かったところもあって(笑)。でも話してみたら、『わからんことあったらいつでも聞いてくださいね』と言ってくれて。それはポジティブサプライズでした。

億単位の投資を動かす。「お客さまの顔が見える」仕事の醍醐味
Q:入社後、最も苦労した出来事は何ですか
工場内の発電所が止まったことですね。直接私が担当した設備が原因ではなかったんですが、少し影響する部分もあって、勝手に責任を感じていました。工場内の発電所が止まると、外から電気を購入しなければなりません。そうするとコストが嵩んでしまいます。大きな工場だとその差額も大きなコスト要因になります。工場内のインフラを担っているので、何かトラブルがあると影響が大きい。それを改めて実感した出来事でした。
Q:仕事の魅力はどんなところですか
電力会社の時は、お客さまが見えなかったんですよ。一般家庭に電気を届けているんですが、直接顔を合わせることはない。でも三菱ケミカルでは、工場内の運転員や事業所内の工場の方々が直接のお客さまで、ダイレクトに繋がっています。
設備を更新する時に、現場の運転員の方に『こういう機能があったら便利ですか』と相談しながら改善を加えることがあるんですが、それが実現できた時に『良くなったよ』と言ってもらえると、本当にやってよかったと思えます。その時に、ここが自分の居場所だと感じられるようになりました。
チームで扱う年間の投資予算は億単位です。その投資計画を承認まで持っていくスケジュール管理や、工場を止めないタイミングでの工事調整など、工場のライフラインを守る仕事に携わっているという実感があります」

「わからない」と言える人が、チームを強くする
Q:転職を検討している方へ、どんな人が向いていると思いますか
わからないことは「わからない」とはっきり言える人ですね。それが1番大事だと思っています。そして、わからないからといって放置するのではなく、一緒に調べられる人。
私自身も入社した時、電気以外は全部わからない状態でした。それをわからないと言いながら、勉強して少しずつ習得していった。その経験があるので、わからないことを正直に言える人は信頼できると思っています。
チームとして大切にしているのは、足元から1年先までのスケジュールをしっかり立てて共有すること。上司への説明前には資料を共有してお互いに気づきを出し合うこと。小さなことですが、そういう積み重ねが大事だと思っています。
Q:最後に、転職を検討している方へメッセージをお願いします
私は39歳での転職でしたが、今振り返ると、残るのも正解だったし、飛び出したのも正解だったと思っています。どちらが正解かは、やってみないとわからない。
ただ、転職先を選ぶ時に大切なのは、自分のこれまでの経験が活かせる場所かどうかだと思います。私の場合は、電力会社での『インフラを供給する』という経験が、三菱ケミカルの動力課部門でそのまま活かせました。
不安はあると思いますが、入ってみると意外と馴染めるものです。工場の現場メンバーも温かく迎えてくれましたし、OJTでサポートしてくれる人もいます。チャレンジしてみる価値は十分あると思います。
文・撮影:伊藤 崇浩(アンドプロ編集部)
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