
2030年に売上収益1兆円へ、産業用領域を次の事業柱にすべく人材獲得強化中 ブラザー工業の新境地
2030年に向けて売上収益1兆円・産業用領域の売上比率50%という経営目標を掲げ、いま変革期の真っ只中にあるブラザー工業。プリンティング事業を主軸としながら、工作機械・工業用ミシン・産業用プリンターといった産業用領域の強化に向けて、経験者採用を積極的に進めています。
どんな人材を求め、どんな組織で迎え入れるのか。執行役員人事部担当の岡田英嗣氏に、採用戦略から社風・評価制度まで、率直に語っていただきました。
岡田 英嗣(おかだ・えいじ)さん
人事部
1994年4月ブラザー工業株式会社に新卒入社。経理、カンパニー経営企画、複数回の海外出向を経て、2021年4月より人事部長に就任、2025年4月から現職。

産業用領域の売上比率50%へ、プリンターから工作機械へ
Q:ブラザー工業の事業構造について、改めて教えてください
1908年にミシンの修理業から始まった当社ですが、今では売上の半分以上をプリンティング事業が占めています。ただし、ペーパーレス化の流れは誰の目にも明らかですので、プリンティング事業が強い今のうちに、次なる事業の柱を作るべく、変革を続けています。現在は、工作機械と工業用ミシンを含む「マシナリー事業」と、「インダストリアル・プリンティング事業」が大きく成長をしています。なかでも工作機械は「30番機」と呼ばれる小型を手掛けているのが特徴ですね。
Q:2030年に向けた具体的な目標を教えてください
ブラザーグループビジョン「At your side 2030」のもと、売上収益1兆円・営業利益1,200億円という財務目標を掲げています。そのうち、産業用領域で売上比率50%、つまり5,000億円を稼ぐという目標があります。
昨年度が売上収益8,935億円、営業利益779億円でしたから、意欲的な目標値なのは間違いありません。M&Aも積極的に推進していて、最近では産業用プリンターを手がけるMUTOH株式会社の買収もその一環です。さらに、この変革を担う人材を外部から獲得すべく、経験者採用も強化しています。
外的要因の変化によって、事業構造も大きく変化しています。当社の歴史は長いですが、まさに大きな変革期の只中にあるのが現状です。

「お客様を直に知る」ブラザー工業に根付くイズム
Q:採用のターゲットはどのような方ですか?
産業用領域への経験者採用がメインです。工作機械業界でのご経験をお持ちの方や同業界の実務経験者が一番親和性は高いのですが、そもそも該当する候補者は多くありません。ですので、重工系や自動車系メーカーなど、仕事のなかで工作機械に触れた経験がある方も積極的に採用しています。理系の方であれば、大学時代の研究室で旋盤などを使った経験がある方も多く、工作機械をまったく知らない方はいません。工作機械の業界に限らず、ターゲットになりうる方はたくさんいらっしゃいます。
Q:異業種からの転職者も活躍できますか?
十分に活躍できます。大切なのは技術的な背景よりも、「お客様を直に知りたい」という意欲です。面接でも、お客様への訪問機会がどれくらいあるか聞かれる方が多いのですが、そういう方の方が間違いなく当社にはマッチしています。
当社は、営業担当者が持ち帰ったお客様の困りごとを開発部門にフィードバックし、必要であれば開発エンジニアであっても直接お客様のもとに赴く。そういったお客様との距離感の近さが、当社の製品開発の強みにもなっています。

Q:大型機を取り扱う工作機械メーカーからブラザーへ転職してくる方も多いと聞きます。なぜブラザーを選ぶのでしょうか?
大手工作機械メーカーで大型機を扱ってきた方ほど、小型機の可能性に気づいている方が多いんです。「40番機でしかできなかった加工が30番機でもできるようになる」という技術の進化を肌で感じているからこそ、その可能性に賭けたいという方が増えています。
また、スペースや予算の制約のために、大型機の導入が難しい中小の町工場にも、小型機なら導入しやすく、生産性向上に貢献できます。産業の最前線に直接触れられるという魅力も、大きな動機になっているようです。

選考プロセスと入社後のミスマッチをどう防ぐか
Q:選考で特に大切にしていることは何ですか?
コミュニケーションを大切にしています。すべての面接に、求人部門の管理職が必ず入りますので、候補者の方が持っている技術や経験と、私たちが求めているものがマッチするかどうかを、現場のプロが直接確認します。また、同時に候補者の方も、自分のスキルがブラザーでどう活かせるかを確認していただけます。お互いがしっかりコミュニケーションをとり、判断できる場を作ることを大切にしていますし、面接が終わった後も採用担当者が候補者と個別にコミュニケーションを取る時間を設けています。
Q:選考スピードへのこだわりはありますか?
スピード感はとても意識しています。面接でお会いできていれば可能性があるのに、先に他社への入社が決まってしまって、辞退されてしまうのは非常に残念です。それを防ぐには、選考スピードを上げるしかない。候補者の方に早くお会いできることを、採用チームとして大切にしています。

過去には「40年、時代を先取り」した製品も。失敗に寛容な社風の実像
Q:ブラザーの社風を一言で表すとしたら?
一言で言うなら、「大企業の規模を持ちながら、中小企業の良さが残っている会社」だと思っています。競合他社と比べると、会社の規模は比較的小さい。でもだからこそ、部門と部門の壁がなく、裁量権の広い仕事ができる、その文化が今も残っています。
工作機械の事業は刈谷工場にありますが、そこはワンフロアに営業・開発・製造・品質管理が全員いる構造です。何かあればすぐ話ができますし、営業で何が起きているかも同じフロアにいれば自然と見えてくる。そういう環境が、縦割りではなくチームワークで動く文化を生んでいます。
Q:ボトムアップ型の組織だと聞きましたが、本当ですか?
本当です。これは制度というより文化ですね。創業当初からずっと続いてきたもので、なぜそうなったかを正直に言うと、自分にもよくわかりません(笑)。ただ、上の役職者との距離が近く、現場からの意見が頭ごなしに否定されることはほとんどない。それが自然にそうなっているというのが、長い歴史のなかで積み上げてきたものだと思います。
また、このボトムアップの文化は、失敗に対して寛容な社風にも繋がっています。ブラザーは118年の歴史のなかでさまざまなプロダクトを生み出してきました。バイクのエンジンを手掛けていたこともありますし、掃除機を作っていた時代もあるんです。1986年には「TAKERU」という世界初のパソコンソフト自動販売機も生み出しているんですが、電話回線経由でデータをダウンロードし、フロッピーディスクへ書き込んで販売する画期的な仕組みで、現在のデジタル配信の先駆けでした。時代を先取りしすぎて、事業としてはうまくいきませんでしたが、「TAKERU」の技術は、その後通信カラオケの製品開発につながっているんです。

このように、失敗したように見えた事業が、数年後に別の形で技術として活きてくることが多く、本社の近くにある展示館の「ブラザーミュージアム」には、うまくいかなかった商品も展示しているんですよ。
Q:経験者採用での入社者の人には何を期待していますか?
経験者採用の方には新しい風や知見を持ち込んでほしいと思っています。「この人が入ると化学反応が起きそうだ」と感じれば、ぜひ来てくださいという判断をします。相乗効果というのは必ずありますから。
役割等級制度で納得できる働き方を
Q:働きやすい会社として評価されていますが、具体的にどんな制度がありますか?
フレックスタイム制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度など、一般的な制度が揃っています。在宅勤務は週2日が基本ですが、ご家庭の事情などで、上司が承認すれば、週3日以上、場合によってはフルリモートでの勤務も可能です。
ただ、制度が整っているということよりも大切なのは「実態が伴っているかどうか」ということが重要であると思っています。実際に当社は各自が働き方に合わせて、各種制度を活用しています。
また、不妊治療休暇制度や、昭和20年代から続く健康保険組合経営の病院(ブラザー記念病院)など、東海圏の企業のなかでも先進的な取り組みを早くから行ってきました。育児と仕事の両立支援も、他社より5〜10年早く整備してきた自負があります。

Q:評価制度はどのような仕組みですか?
「役割等級制度」を採用しています。ジョブ型に近い考え方で、年功序列ではなくアウトプットベース(成果)で処遇を決めるというものです。20年の経験があっても一定のアウトプットしか出せない方より、5年の経験でそれ以上のアウトプットを出せる方を優先すべきだという考え方です。
この評価制度に変えた目的は、年功的な要素を取り除くことでした。若い人の意欲や力が十分に発揮できていないという課題感があったからです。逆に、年配の方でもしっかり活躍していれば、きちんと処遇する。年齢に関係なく、役割と成果で評価するということです。
Q:社内複業制度もあると聞きました
2023年度から始めた制度で、自分のリソースの20%程度を別部門の仕事に充てることができます。これまでに30件ほどが成立していて、社内複業を経験したことで部門異動につながったケースもあります。プリンティング事業のエンジニアが新規事業に関わったり、コーポレート部門の方が事業部の業務をサポートしたりと、事業や部門をまたいだ横断的な動きが生まれています。

転職を考えている方へ
Q:最後に、転職を検討している方へメッセージをお願いします
当社は今、変革期の真っ只中にあり、産業用領域を強化し、2030年に売上収益1兆円を達成するという目標に向かって動いています。
そういう企業の変革期に携われるというのは、なかなか得られない貴重な経験だと思います。自分が貢献できる、貢献したいという意欲がある方に、ぜひ仲間として来ていただきたいです。
当社は「やりたいことはご自身の提案で自由にやれる会社」だと、私は思っています。変化を楽しめる方、お客様に直接貢献したい方、そういう方にとって、ブラザーは非常に面白い会社だと思いますよ。
文・撮影:伊藤 崇浩(アンドプロ編集部)
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