
146年の伝統企業を、創り直す。グループCPOが語る今だから得られる「圧倒的な介在価値」
日立造船からカナデビアへ。2024年に社名を変更した同社は今、「第二の創業期」とも呼べる変革の時を迎えています。売上の半数を海外が占めるグローバル企業としてのポテンシャルを誇る一方、同年に公表された品質不正への対応やガバナンス強化など、いわば「組織OS」の書き換えが急務。2025年に着任し、同社の変革を主導する土肥太郎グループCPOに、改革の現在地と、今だからこそ得られる「組織を創る醍醐味」について伺いました。
土肥 太郎(どひ・たろう)さん
専務執行役員 ピープル&カルチャー本部長(グループCPO)
メルセデス・ベンツ日本、マクロミル執行役CCOなどを経て、2025年4月より現職。外資系、スタートアップ、事業再生など多様なフェーズでの人事改革・組織変革に精通。「第二の創業期」を迎えたカナデビアの組織風土改革と人的資本経営を牽引している。
環境事業が牽引する成長と、今求める「変革の旗手」
Q:社名変更や組織改革など大きな節目ですが、現在のカナデビアが持つ「事業の魅力」をどう定義されていますか
旧社名の「日立造船」は、世間的には“伝統的な造船メーカー”というイメージが強いかもしれません。しかし実際には、事業ポートフォリオは長年かけて大きく変化しており、現在のカナデビアでは、ごみ焼却発電プラントを主力とする環境事業が中核を担っています。売上比率も国内外でほぼ50対50となっており、グローバル・インフラ企業となりました。社名変更は、そうした実態に合わせたものとも言えます。脱炭素や資源循環といった地球規模の社会課題解決が綺麗事ではなく、巨大なビジネスとして動いている。このスケール感こそが、最大の魅力です。
当社は2018年度から、7期連続で増収増益を記録しました。2025年度は子会社の技術トラブルなど複合的な要因が重なり、増収減益となりましたが、事業がダウントレンドに入ったわけではなく、基本的な成長モーメンタム(勢い)は間違いなく上昇基調にあります。

――国内外で事業が拡大するなか、それぞれどのような人材を求めているのでしょうか
まず海外事業においては、急拡大する拠点を支え、コントロールするための「グローバル・ガバナンス」の強化が急務です。多様な文化を束ね、世界標準のマネジメントを構築できる人材が求められます。一方、国内事業においては、社会インフラの老朽化や労働力不足といった課題に対し、日鉄エンジニアリング様との経営統合協議も含めたダイナミックな再編が進んでいます。既存の枠組みにとらわれず、新たな事業モデルや効率的なプロセスをゼロベースで構築できる人材が不可欠です。
ぜひ「広い視野と高い探究心、想像力」を兼ね備えた方とともに当社の「第二の創業期」を創り上げていきたいと考えています。
過去の過ちに正面から向き合う。信頼回復と組織再生に向けた取り組み
Q:その「第二の創業期」にあたり、品質不正問題もあるなかで土肥グループCPOがカナデビアへの参画を決めた理由は何でしょうか
私の着任は2025年4月で、品質問題(※)によって世間から批判が集まっていることは認識していました。事態は重く、実はカナデビア側から私のキャリアを気遣って「今回は辞退していただいても構わない」という連絡さえあったほどです。しかし、それが参画を思いとどまる理由にはなりませんでした。

私はこれまで、スタートアップの成長支援や事業再生の現場を数多く見てきました。その経験から確信しているのは、「起きてしまった事象に真摯に向き合った上で、これから未来の組織をどう変えられるかが全て」だということです。当社には146年培ってきた卓越した技術力という確かなアセットがあります。この事態を厳しく受け止め、本気でこれまでの組織OSを書き換えることで会社はもっと良くなると確信しています。
完成された会社で平時を過ごすよりも、この難局の経営のど真ん中で組織の再生に尽力することに、プロフェッショナルとしての強い使命感と覚悟を持ち、参画を決めました。
(※)2024年に発覚した子会社の舶用エンジンデータ改ざんなどの不適切行為。2025年には他事業への拡大も判明した。事態を重く受け止め、現在グループ全体でガバナンスの再構築と再発防止に取り組んでいる。
「膿を出し切る」。自浄作用の芽生えと、現場で起きている意識改革
Q:実際の改革の手応えはいかがでしょうか。組織は具体的にどう変わりつつありますか
着任後の1年は事実に対して真摯に向き合い、反省した上で徹底的に「膿を出し切る」作業を行いました。その一つの成果として、内部通報(※)の件数が一時的に増えたことが挙げられます。これは決して悪いニュースではなく、以前なら飲み込んでいたようなことも、「おかしいことはおかしい」と安心して言えるようになったという証拠です。心理的安全性が担保され、組織の自浄作用がまさに機能し始めました。

「カナデビア」の由来である「奏」の文字。清水寺貫主が筆を執った書が社屋のエントランスを飾る
また、「It's my career(キャリアは会社のものではなく、個人のものだ)」というメッセージを掲げ、個々のキャリア自律を促す意識改革キャンペーンも進めています。もちろんこうした風土改革は、一過性のイベントで終わらせては意味がありません。
例えば、自ら進みたいキャリアに手を挙げられる「キャリア申告制度」を新設しました。ほかにもこれまでの伝統的な形式を打破し、内定式をノーネクタイで実施するといった象徴的な変化をひとつひとつ積み重ねる……など「手を変え品を変え」、同じメッセージを繰り返し伝え続けることで、行動が習慣になり、ようやく組織のOSが書き換わっていくのです。今後もこうした取り組みを継続し、真の組織変革を推し進めていきます。
(※)24年度の内部通報件数は過去最高(24件)。新設したチャットボットでの相談窓口には数百件の相談があった。
――社員の方々のマインドや社外からの見られ方に変化はありますか
はい。タレントの影山優佳さんを起用した『デっカい社会科見学』といったコンテンツを配信するなど、ブランディングにも力を入れています。さまざまな取り組みの結果、新卒者のエントリーが1.5倍に増え、学生向けのセミナーでも認知度が向上しました。こうした外からのポジティブな評価は、社員が自社の社会的な意義を再認識し、誇りを取り戻す大きなきっかけになります。自社に誇りを持つことで初めて、「この舞台で自分はどうありたいか」というキャリア自律の芽が育つ。ブランドの刷新と改革は、社員個人の自律的な成長を支える重要な土台でもあるのです。
この変革において、グループCEOの桑原と私は完全に志を一つにしています。人事が単独で旗を振るのではなく、「昨日までとは明らかに何かが違う」という経営の本気度を、目に見える形、肌で感じる形で示し続ける。それこそが、変革を成し遂げるための絶対条件だと考えています。その熱量は、少しずつですが確実に現場へも波及し始めていると確信しています。

――中途入社の方々が、そうした現場の改革を後押ししている面もあるのでしょうか
まさにその通りです。2019年に30人程度だった中途採用者は、2025年実績で202名まで急増しました。今や全社員約4,000人の5%に達しており、外部の視点が入ることで「社内の当たり前」に健全な違和感を唱えられる土壌ができつつあります。
彼ら、彼女らが遠慮せず力を発揮できるよう、入社時に孤立させないためのサポートも万全を期すべく体制を構築しています。「即戦力だから」と現場に丸投げするのではなく、オンボーディング専用のタスクチームを組成し、入社後1カ月、3カ月、6カ月のタイミングで定期面談を行っています。そこでもし良くない兆候があれば、HRビジネスパートナーが即座に現場へ入って課題解決に動く。新しい仲間が存分に力を発揮できるよう、人事として徹底的に伴走しています。
「未完成」だからこそ面白い。経営のど真ん中で組織を創る醍醐味
Q:さまざまなフェーズがあるなかで、「今」カナデビアに入社する魅力は何でしょうか
今のカナデビアでは、他社との経営統合協議や事業ポートフォリオの見直しなど、ありとあらゆる変化が同時に起きています。業績を立て直し、リアルな経営のど真ん中に入り込める環境は、社会人人生で誰もが味わえるものではありません。
実は当社では新生・カナデビアとしての新しいパーパスやミッション、バリューをまさにこれから作り直そうとしているところです。既存の完成された理念にただ従うのではなく、「なぜこの会社が存在するのか」「どんな価値観で働くのか」という根幹の部分から、一緒に考え、創り上げていく。ここに魅力を感じていただければ、きっと入社されてもご活躍されるのではないかと思います。

本社エントランスに展示される船舶模型。造船から環境・インフラへ、事業は大きく姿を変え、成長を続けている
――最後に、この記事を読んでいる候補者の方々へメッセージをお願いします
社会インフラを守り、グローバルで勝負するという大きな事業のミッション。そしてその裏にある、自分たちの組織やカルチャーを泥臭く、イチから創り直すという変革。その両方を「面白い」と思えるタフな精神を持った方を歓迎します。
今のカナデビアはこれから乗り越えるべき課題も山積みです。しかし、だからこそ他では得られない圧倒的な介在価値があります。この変化の激しい環境に飛び込み、ともに「新しいカナデビア」を創り上げてくれる方をお待ちしています。

文:酒井 悠一(アンドプロ編集部)/撮影:冨森 幸一
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