
罰則付き義務化の認知度は9割超、対策拡大するも3割超の現場が不満
株式会社クイック(本社:東京都港区、代表取締役会長:川口一郎)は、全国の施工管理職を対象にした「建設業の熱中症対策に関する実態調査」を実施しました。2025年6月の改正労働安全衛生規則の施行(企業の熱中症対策の罰則付き義務化)から1年が経過した今、現場の対策状況とデータから見えた構造的な課題について公表いたします。
【TOPICS】
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【対策の認知度と影響】罰則付き義務化の認知度は9割超。約半数の現場で対策が加速
全体の91.3%が「知っている」と回答
熱中症対策の罰則付き義務化について、「知っている」と回答したのは全体の91.3%でした。また、全体の78.7%が義務化の内容について「よく理解している」「少し理解している」と回答しており、法改正に対する認知が広がっていることがわかりました【図1】。
【図1】熱中症対策の義務化に対する認知度

業種による認知度の差も明らかに
なかでもサブコンの認知度が最も高く、90.0%が「内容もよく理解している」「内容を少し理解している」と回答しました。一方で、住宅では61.9%にとどまり、業種により意識の差があることがわかりました【図2】。
【図2】業種別に見た熱中症対策の義務化に対する認知度

47.3%が義務化によって熱中症対策を加速
全体の47.3%が義務化によって熱中症対策を実施するようになった(「積極的に実施するようになった」33.1%、「ある程度の対策を実施するようになった」14.2%)と回答しており、法改正が熱中症対策の底上げに大きく貢献したと考えられます。
また、「義務化前から積極的に実施している」という回答も33.1%あり、全体の80.4%が熱中症対策を実施していることがわかりました【図3】。
一方で、義務化後も「十分な対策ができていない(7.9%)」「何も対策を実施していない(4.7%)」という回答も12.6%見られ、現場によって実態に差があることがうかがえます。
【図3】義務化による熱中症対策の変化

サブコンの安全意識の高さが際立つ結果に
業種別に見ると、サブコンでは、40.0%が「義務化前から積極的に実施している」と回答しており、「義務化によって積極的に実施するようになった」の50.0%を合わせると、90.0%が積極的に実施しているという結果になりました【図4】。
専門分野の施工、現場の作業員(職人)の管理を直接担当することから、安全意識が高く保たれていることがうかがわれます。
【図4】業種別に見た義務化による熱中症対策の変化

【対策の満足度】3割超の現場が現在の熱中症対策に不満
33.8%が「不満・どちらともいえない」と回答
熱中症対策の満足度については、全体の66.2%が「満足している」(「十分満足している」26.8%、「まあまあ満足している」39.4%)と回答しました【図5】。
一方、33.8%が「不満・どちらともいえない」(「不満である」3.9%、「どちらかといえば不満である」7.1%、「どちらともいえない」22.8%)と回答しています。
【図5】現在の熱中症対策に対する満足度

【熱中症対策の課題】予算不足や工期の問題が浮き彫りに
「不満・どちらともいえない」と回答した人に、その理由を聞いたところ、予算不足や工期の問題などが浮き彫りになりました。
対策への不満・現場に横たわる課題(自由記述より)
【予算不足】
「熱中症対策を行うに当たって、現場ごとの予算が必要だが各現場が小規模なため使える予算がない。そのため下請け会社に対して『適度な休憩をするよう促すこと』しかできない」(住宅 30代女性)
「限られた予算の中で対策をとらなければならず、効果は不十分だと思われる」(住宅 40代男性)
「空調服の支給がないため自己負担せざるを得ない」(小規模建設業 50代男性)
「夏場の工事の際の、熱中症対策にかかる必要な経費を工事費に組込むことを義務化すべき」(ゼネコン 50代男性)
「最近の電子機器は便利で効果があるが高額なため、受注金額が多くないと採用が難しい。そのため飲み物や空調服の支給だけにとどまり十分とは言えないと思う」(ゼネコン 50代男性)
【工期や残業】
「工期ありきなので遅延につながるようであれば対策を実施しづらい」(サブコン 40代男性)
「前職では熱中症パトロールを社員で行っていたが、残業規制の中で継続するのは厳しい」(建設コンサル 20代男性)
「作業効率が落ちることに対しての工程的配慮がほしい」(ゼネコン 40代男性)
「工事延長が多く、熱中症対策に費用が多くかかる」(ゼネコン 50代男性)
「鉄道工事において線路閉鎖中に休憩を取ることは難しい」(ゼネコン 50代男性)
【業務の体制・会社の姿勢】
「会社としてあまり積極的でないように感じる」(ゼネコン 50代男性)
「会社は対策を行うよう指示はするが、具体的な策を講じていない」(住宅 50代男性)
「現場によりけりになっていて標準化されていない」(サブコン 30代男性)
「複数現場を掛け持ちしているため、各現場の状況を確実に把握できず、日々の入退場に関する情報を把握するのが難しい」(サブコン 30代男性)
「会社は必要最小限のことしかやらない。もっと手厚くすべき」(ゼネコン 50代男性)
業種別の満足度では住宅が突出して低い結果に
業種別の満足度を見るとサブコンが最も高く、「満足している」が85.0%(「十分満足している」50.0%、「まあまあ満足している」35.0%)という結果になりました【図6】。
ゼネコンは「満足している」が69.2%(「十分満足している」34.6%、「まあまあ満足している」34.6%)と2番目に高い結果となった一方で、19.3%が「不満」(「どちらかといえば不満」15.4%、「不満である」3.9%)と回答しています。この結果からは、現場ごとの独立採算制により、予算が厳しく十分な対策が取れない現場が一部にあることがうかがわれます。
住宅は「十分満足している」が9.5%と他業種と比べて突出して低い結果でした。また、「不満」も19.0%(「どちらかといえば不満」9.5%、「不満である」9.5%)に達しています。住宅の場合、現場が小規模で予算が十分ではない、一人親方で現場を回すことも多いため効果的な対策が取れない、といった背景が考えられます。
【図6】業種別に見た現在の熱中症対策に対する満足度

【KY活動の実施状況】熱中症対策におけるKY活動は7割が実施
対策に積極的な現場ほどKY活動が定着
熱中症対策における「KY(危険予知)活動」については、全体の70.8%が「行っている」と回答しました【図7】。
また、熱中症対策を「積極的に実施している」と回答した現場の86.9%がKY活動を行っていると回答しており、熱中症対策を積極的に実施している現場ほどKY活動が日常的な安全衛生管理として定着していることがわかりました【図8】。
【図7】KY活動の実施状況

【図8】熱中症対策の積極度とKY活動の実施状況

効果があると感じるのは「作業内容と気象条件の確認」
KY活動を行っている現場に対し、「実際に効果があると感じているKY活動の内容」を調査したところ、「当日の作業内容と気象条件(気温、WBGT値など)の確認」(40.9%)が最も多く、次いで「休憩・水分補給タイミングの設定と明示」(30.1%)となりました【図9】。
単に「無理をしないように」と呼びかける精神論ではなく、その日の具体的なWBGT値を確認し、「何時に休憩を挟むか」をスケジュールとして可視化・明示することが、効果の高い対策として評価されていることがうかがえます。
【図9】効果があると感じているKY活動の内容

【強制休憩の実施状況】3割超の現場が「実施しづらい」と感じている
2割超の現場が強制休憩の実施に消極的
WBGTや気温を基準にした「強制休憩」の実施状況については、全体の66.9%が「実施している」(「十分に実施している」42.5%、「時々は実施している」24.4%)と回答しました【図10】。
その一方で、「あまり実施していない」15.8%、「まったく実施していない」6.3%と、全体の22.1%が強制休憩の実施に消極的であることがわかりました。
【図10】強制休憩の実施状況

住宅では3割近くが「実施していない」と回答
業種別の実施状況を見ると、サブコンの85.0%(「十分に実施している」55.0%、「時々は実施している」30.0%)が最も高い結果になりました【図11】。
一方、住宅では「実施している」は57.1%(「十分に実施している」33.3%、「時々は実施している」23.8%)にとどまり、最も低い結果となりました。逆に「実施していない」という回答は28.6%(「あまり実施していない」14.3%、「まったく実施していない」14.3%)と最も高くなっています。
住宅では、1人の現場監督が複数の現場を管理していることや、地場の工務店など小規模の事業者が現場を動かすことが多いことが、強制休憩を実施しにくい原因と考えられます。
【図11】業種別に見る強制休憩の実施状況

強制休憩を実施しづらい理由は「工程上の課題」が大半を占める
強制休憩の実施しづらさについては、全体の29.1%と3割近くが、「実施しづらいと感じたことがある」と回答しました【図12】。
その理由としては、「途中で止められない作業が多いため」が45.5%と最も多く、次いで「全員が同時に作業を止めるのが難しいため」が34.1%と、工程上の課題が大きいことが浮き彫りになりました【図13】。
【図12】強制休憩の実施しづらさ

【図13】強制休憩を実施しづらい理由

【熱中症リスク】リスクが高い現場ほど強制休憩には積極的
過去に熱中症が発生した現場では、81.0%(「十分に実施している」50.0%と「時々は実施している」31.0%)が強制休憩を実施していることがわかりました【図14】。
一方、熱中症が発生していない現場では、強制休憩を実施している割合は69.6%にとどまり、熱中症リスクが高い現場ほど、より積極的に強制休憩を実施している状況がうかがわれます。
また、熱中症が発生していない現場では、強制休憩を「実施していない」と回答した割合が26.2%(「あまり実施していない」19.7%、「まったく実施していない」6.5%)と、熱中症が発生した現場(「実施していない」19.0%)に比べて高くなっています。
【図14】熱中症患者の有無と強制休憩の実施状況

【図15】これまでの熱中症患者の有無

工程上の課題を抱えながら現場の努力で強制休憩を実施
強制休憩を「実施しづらいと感じたことがある」と回答した現場の81.0%が、実際には強制休憩を実施している(「十分に実施している」40.5%、「時々は実施している」40.5%)と回答しました【図16】。
「途中で止められない作業が多い」「全員が同時に作業を止めるのが難しい」といった工程上の課題を抱えながらも、現場の努力で強制休憩を実施していることがうかがえます。
【図16】強制休憩の実施しやすさと実際の実施状況

調査概要
内容 | 建設業の熱中症対策の実態調査 |
調査期間 | 2026年6月5日(金)〜16日(火) |
調査対象 | 全国の建設業者に所属する施工管理職 |
調査方法 | インターネット調査 |
有効回答数 | 127件 |
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