
データを運び、熱を制する——AI時代のうねりに乗る、”老舗”古河電工が求める「変革者」とは?
140年超の歴史を持つ古河電工が、今、大きな転換点を迎えています。AI需要の拡大によって、データセンターを経由する通信量は急増し、同時にAI半導体の発熱対策も大きな課題となっています。
「データを運び、AIの熱を制する」——。古河電工は、光ファイバーケーブルと放熱・冷却技術の両面をはじめ勢いが止まらないデータセンター市場の拡大を裏側から支えています。
では、変革期にある古河電工は、どのような人材を求めているのか。人事責任者に伺いました。
大塚 裕之(おおつか・ひろゆき)さん
人事部長
2000年新卒入社 事業所総務、人事部門、経理部門などを経て2025年より戦略人事部長(現・人事部長)人事部門の責任者として、経営戦略と連動した人材戦略を推進。

素材メーカーから社会インフラソリューション企業へ。140年超の歴史のなかで、今が最大の転換点
Q:古河電工の現在の事業環境をどのように捉えていますか
銅の精錬という素材の加工から出発した当社は、社会インフラを支える企業として時代とともに領域を広げ、現在はインフラソリューション企業へと進化しています。事業が多岐にわたるため説明は一言では難しいですが、今が142年の歴史のなかでも「最大の転換点」であることは間違いありません。
特にデータセンター関連の環境変化は劇的です。この大きな波を捉え、私たちは今、企業として次のステージへ駆け上がる絶好のチャンスを迎えています。
Q:データセンター事業がそこまで重要な転換点になっているのですか
AI需要の拡大に伴い、データセンターへの投資が急速に増えています。特にデータを送るための光ファイバーケーブルや、映像や画像の描画のほかAI学習やデータ解析をおこなうために大量のデータを処理するAI半導体を冷やすための放熱・冷却製品の引き合いは急増しています。この活況は2030年頃まで続くと見られており、その後も高度化していくと予想されます。当社の売上高や利益構造も、この流れによって大きく変わろうとしています。
この変化はこれまでとは、まったく異なるレベルのジャンプアップだと感じています。だからこそ、当社自体にも相当な覚悟が必要です。企業文化やこれまでの仕事のやり方を根本から変えていかなければ、到底この波に乗ることはできません。

北米ハイパースケーラーとの厳しい取引。そこで鍛えられた人材が、古河電工の最大の資産
Q:データセンター関連事業のなかでも、特に古河電工が強みを持つのはどの領域ですか
サーマル・電子部品事業、つまり放熱・冷却技術の分野です。AI時代の半導体の発熱量が急速に増えており、その熱をいかに冷やすかが重要になっています。そこで対応できる企業は限られており、当社も業界有数のシェアを誇る得意領域です。
Q:その技術的な強みは何ですか
当社が素材メーカーとして出発したという背景が大きいです。冷却技術には、まず素材が第一に必要です。銅やアルミといった金属素材を適切に使いこなす技術が、当社の強みの基礎となっています。
加えて、北米ハイパースケーラーを相手にしてきた経験が、当社の人材を鍛えています。彼らの要求は非常に厳しく、スピーディーな対応が必須です。『まずはイエスと言わないと入れない』という商習慣のなかで、日々、仕様変更に対応しなければなりません。そうした環境のなかで、当社の人材は相当に鍛えられている自負はあります。

Q:具体的には、どのような厳しさがあるのでしょうか
顧客からの要求は、時に『それは無理では』と思うようなレベルに達することもあります。当社はそれを上回るような設定提案力を示さなくてはなりません。
また、彼らは投資を続け、データセンターを拡充していく意向があります。当社も顧客の発注量に応える積極的な投資を求められます。そうした世界トップの領域で戦う人材は本当に成長しています。
10年前はほぼゼロだったキャリア採用を、今は年間200名へ
Q:キャリア採用を大幅に増やしている背景は何ですか
事業のスピード感が上がっているというのが、最大の理由です。10年前はキャリア採用がほぼゼロでしたが、新卒を採用して何年もかけて育成するというやり方では、もう間に合いません。
同時に、こうした従来の当社のやり方に対する問題意識もあります。当社と異なる文化や知見を持った人材が入ることで、より良いものが作れるのではないか。そうした考えから、キャリア採用の比率を大きく高め、現在は年間200名程度となっています。
Q:外部からの人材が入ることで、どのような課題が見えてきたのでしょうか
当社は社会インフラにかかわる事業を長く展開してきたせいか、『昔からこうやっている』というビジネス感覚が根強くあります。しかし当社を取り巻く状況の変化の速さもあいまって、『スピード感が足りない』という指摘をよく受けます。
同時に指摘されるのが『地味だ』ということです。これまでに紹介した通信インフラだけでなく、電力エネルギーや自動車など、実は幅広い業界で非常に高度で重要な仕事をしているのに、なかなか上手にアピールできていないこともあって、世間的な認知度が低い。そこも変えていく必要があると考えています。

「地味、されど先進的」。軸になるのは「正々堂々」
Q:古河電工が142年もの間、生き残り続けてきた理由は何だと思いますか
それは、当社が研究開発を大事にする土壌を持ち続けてきたからだと思います。素材メーカーとして出発した当社は、常に『次は何ができるのか』という問いを持ち、長期的な視点で研究開発に投資してきました。
例えば、超電導技術です。当社は1960年代から金属系超電導線材(低温超電導)の研究開発を開始し、1986年には酸化物超電導体(高温超電導)による線材技術の開発にも取り組みました。現在、当社は低温超電導技術と高温超電導技術の両方を持つ世界的にも稀有な企業として新しい機能や高品質の超電導線材の開発と製造を行っています。MRIや核融合発電など、多様な分野での応用が期待されています。
ほかにも、現在では、東京大学との共同研究で宇宙領域の研究にも乗り出しています。小型・超小型衛星の設計・開発、および搭載コンポーネントの開発に取り組んでいます。2026年10月には、共同開発した実証実験衛星『ふなで』を打ち上げる予定です。
こうした姿勢が、当社を『先進的な研究者気質の会社』と言わしめているのだと思います。
ですから、当社が『地味』に見えるのは、派手な広告宣伝よりも、当社のコアバリュー(共通の価値観)のひとつである「正々堂々」の言葉通り、真正面から地道に研究開発に力を注いできたからかもしれません。その地道な積み重ねが、今のデータセンター事業での急成長につながっているのです。

顧客の要望の『自分事』化と、インサイトを探る力。古河電工が求める、真の専門性とは
Q:では、古河電工が求める人材像は、どのようなものですか
顧客の要望を自分事として受け止められる人材です。もちろん専門性は必要ですが、それだけでなく、『当社として、さらに何ができるのか』を考えられる人が必要です。
これはマーケティングに近い素養だと思います。当社は完全な受注生産型なので、『こういう製品を作ろう』と当社が決めるのではなく、『顧客にいかに買ってもらうか』『発注を出してもらえるか』という視点が重要なのです。
Q:キャリア採用で入社される方は、どのようなバックグラウンドをお持ちですか
さまざまです。データセンター関連の経歴を持つ人は、正直なところ少ないです。むしろ、異なる業界から来ていただく方が多いです。
自動車関連の人材も、技術系という点でマッチする傾向があります。メーカーに従事した基礎があれば、当社の文化や技術は学べるという考え方です。
変革期の古河電工で、あなたの専門性を活かす
——最後に、古河電工への転職を検討している方へ、メッセージをお願いします
当社は今、140年の歴史のなかで最大の転換点を迎えています。データセンター関連事業の急成長という波に乗り、企業として1段階上のステージへ進もうとしています。
その過程で、外部からの知見や経験を取り入れることは不可欠です。あなたがこれまで培ってきた専門性や経験が、当社の変革を推し進める力になります。スピード感のある環境で、世界トップの顧客と向き合いながら、自分自身も大きく成長できる場所です。
ぜひ、この変革期の古河電工で、あなたの力を発揮してください。

文・撮影:伊藤 崇浩(アンドプロ編集部)
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