
大企業・日揮HDはなぜ「風通し1位」なのか? 人事担当役員が明かす、サイロ化防ぐ“斜めの繋がり”と圧倒的達成感
国内外でのエネルギー分野のプラント建設を主力事業とし、国家レベルのプロジェクトを数々成し遂げてきた日揮グループはいま、脱炭素社会の実現に向けたSAF(持続可能な航空燃料)などの次世代エネルギーから、ナノ技術を活用した機能材製造事業の拡大に至るまで、事業の多角化を進めています。CHRO(最高人事責任者)の花田さんは、企業パーパス「Enhancing planetary health」の軸となるのは人的資本経営だと言い切ります。激動の時代に求められる「多能化人財」の育成、キャリア採用者への手厚いサポート体制など、日揮のリアルなカルチャーと求める人物像について伺いました。
花田 琢也(はなだ・たくや)さん
専務執行役員・CHRO(最高人事責任者)
1982年、土木エンジニアとして日揮に入社。海外プロジェクトの最前線で数々の困難な現場を指揮し、アルジェリア現地法人の社長も歴任。現在はCHROとして、人事・組織変革を強力に牽引している。
何もない砂漠に巨大なプラントを ― 圧倒的な達成感
Q:花田さんは土木エンジニアからスタートし、アルジェリア現地法人の社長を務めるなど、生え抜きとしてキャリアを築かれてきました。改めて日揮の主力事業であるプラント建設について教えてください
私たちは、砂漠のど真ん中や移動に数日かかるような僻地など、世界中のあらゆる場所でエネルギープラントを建設してきました。日揮の強みの一つに、「完遂」というマインドがありますが、超大型案件の納期も4年から、長いものでは5年超という長期スパンのものもあります。当然、期間が長くなれば、多国籍な現場で、未開拓の地ならではの問題も発生することもあります。それらを乗り越え、例えば何もなかった砂漠に自分たちが建てた、巨大なプラントに灯がともった感動の瞬間は、言葉では言い表せません。涙が出るほどの圧倒的な「達成感」があります。ゼロからイチを生み出し、さらには、世界中の人々にエネルギーを届けることで、社会の成長に直接貢献しているという実感は、ほかではなかなか味わえない醍醐味です。

日揮が手掛けたプラント(日揮HD提供)
これは我々の企業パーパス(存在意義)である「Enhancing planetary health」という言葉にも表れています。このDNAは1928年に、創業者の実吉雅郎が掲げた「いつの時代にあっても、産業、ひいては社会の基盤を支える存在でありたい」という思いから来ています。
Q:現在は脱炭素社会への移行など、新たな領域への挑戦も進めていらっしゃいます
我々の携わる分野は、エネルギーの安定供給だけでなく、脱炭素、SAF(持続可能な航空燃料)、水素、あるいは医薬品やヘルスケア領域、病院の建設や宇宙領域にまで広がっています。
私はよくこう例えています。「テクノロジー」と「エンジニアリング」はちょっと違う。テクノロジーは色でいえば「原色」です。一方のエンジニアリングは、いろいろなものを紡ぎ合わせ、常に変化している「パステルカラー調」のもので「技術力」ともいえます。我々の強みは原色系の技術を持ちつつ、それをうまくパステルカラー調にエンジニアリングで調合していく力があることだと考えています。
この「技術力」や「エンジニアリング力」は極めて汎用性が高い。ですから、決して今までの領域に限定することなく、社会課題を技術力で解決できる領域があれば、そこには今後も挑戦していきたいと考えています。
「なぜ日揮で働くのか?」社員ひとりひとりのパーパスを“因数分解”で引き出す
Q:人的資本経営において「因数分解」というキーワードを掲げていらっしゃいます。これはどういう意味合いなのでしょうか
因数分解には2つの側面があります。1つは、企業としての経営戦略と人事戦略を連動させるための作業です。経営戦略のなかにあるパーパスやさまざまな目標を細かい要素に「因数分解」し、その因数を「採用」「育成」「人財ポートフォリオ」など、人事の具体的な柱に落とし込んでいくプロセスです。
もう1つの重要な側面は、「社員のパーパスの因数分解」です。社員が企業のパーパスをジブンゴト化するためには、自分自身の歩んできた人生や成功・失敗の経験を因数分解し、企業のパーパスの因数とマッチングさせることが重要です。

Q:自身の価値観と会社のパーパスの接点を見つける、ということですね
その通りです。「自分がなぜこの会社にいるのか」という理由を認識してもらうために、2022年の4月から「パーパスジャーニー」という取り組みを始めました。自分のパーパスを「タグライン(因数の積)」として言語化し、会社メールの署名欄に入れたりしています。因数同士が1つでも合えばOKですし、2つ合えばもっといい。
まずは放電ではなく、充電を。キャリア採用者の可能性を引き出す「多能化」
Q:キャリア(中途)採用で入社される方が増えているなかで、入社後のオンボーディングや支援体制についてはどのような工夫をされていますか
オンボーディングには非常に注力しています。従来のまだ転職が一般的でなかった時代であれば、各部門に生え抜きの社員がたくさんいて、キャリアで入ったメンバーに自然と日揮の歴史や文化を教えることができました。しかし今はキャリア採用のメンバーも増え、事業もホールディングス化により分散し、現場の部署だけでは歴史や会社の全体像を十分に語りきれなくなっています。
ですから、人事がオンボーディングプログラムを組んで、しっかりと「充電」してもらう期間を設けています。
Q:「充電」とはどういう意味ですか?
キャリアで入社された方は、即戦力としてすぐに「放電(アウトプット)」を求められがちです。しかし、それでは持っているスキルを十分に活かしきれない可能性があります。「放電(アウトプット)」だけではなく、当社のやり方や背景を知ってもらうなど「充電(インプット)」にも十分に取り組んでいただくことが肝要です。
充電期間では、日揮が目指す方向や歴史を理解してもらい、「自分はこういう専門軸で入ってきたけれど、もともと持っている別の軸も活かせるかもしれない」と、自身のスキルの「多軸化・多層化」に気づくきっかけにしてほしいと思っています。ハイボルテージのまま放電してもらうためには、最初の充電が絶対に必要なのです。

口コミ「風通しの良さ1位」の裏側。秘訣は“アントニオ猪木の精神”?
Q:日揮は、ある口コミサイトでは「風通しの良い会社」として1位に選ばれたこともありました
プロジェクト型の仕事というのは、何十億、何百億、何千億という金額規模の案件に対し、さまざまな専門性を持った人間が集まってタスクフォースを組みます。そこで数年間、ゴールを目指す運命共同体になるわけです。
そのなかでスクラムを組むには、何よりも「信頼感」が不可欠です。「この情報はあの部門から出てきた数値だから間違いない」と信頼できるからこそ、次の工程の人間がその数値を自分のエンジニアリングに取り込むことができる。この信頼をベースにした「繋がり」が、日揮の風通しの良さの根底にあります。
Q:その繋がりを維持・強化するために、意図的な仕掛けもされているのでしょうか
コロナ禍を機にテレワークが増え、直接的な触れ合いが減り、立体的な繋がりが少し弱くなる懸念がありました。そこで2年前からグループの社員・役員が一堂に会する「JGC PEOPLE DAY」を開催していますし、毎年7月には新入社員が企画する千人規模の「ビアパーティー」があります。
ビアパーティーの開会宣言では、プロレスラーで国会議員も務めた故・アントニオ猪木さんの登場曲・「猪木ボンバイエ」に合わせて、私が登場しました。私が心から尊敬する猪木さんのあの名言を、会場の全社員に伝えています。
「2040年ビジョンの達成に向け、この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。踏み出せばその一足が道となり。その一足が道となる。迷わず行けよ、行けば分かるさ!」

Q:現場主義で汗を流し続けてきた日揮さんらしいエピソードですね
会社に息づくDNAというか、バトンを渡す場になっているはずですし、そうした交流を通して縦横のつながりもできていくのです。そしてその先にある「斜めの繋がり」が非常に大切です。私は土木工学出身なのでよく構造物に例えるのですが、外からの強い風(環境変化)を受けた時に、ブレースや筋交いといった「斜材(斜めの繋がり)」があると、その外力をうまく吸収できるが、斜材がないと耐えるのが難しくなり、巨大な柱になります。太い柱は組織でいうサイロ化(縦割り組織)です。斜めの繋がりは組織全体を自然とスリムで風通しの良いものにできるのです。
変化の向かい風を進む“帆船”となって、一緒に社会課題の解決を
Q:今後の激動の時代において、日揮で活躍できるエンジニア、あるいは求めている人物像はどのようなものでしょうか
今まではジョブ型として「一つのタスクと一つのスキル」をマッチングさせていればよかったかもしれません。しかしこれからは、AIの台頭などを背景に単一のタスクはどんどん無くなっていきます。一つの領域のタスクしかできないと対応できなくなる。だからこそ、「多能化人財(複数の軸を持つ人財)」への成長が求められます。
培ってきた自分自身の「軸」は絶対に大切にしながら、違った視点から物事を「ずらして見る」ことができる方達に来ていただきたいですね。
Q:国外プロジェクトが多く、英語力を気にする求職者も多いかと思います
グローバルな舞台ではもちろん、一定の英語力が求められるケースが多くあります。会社としても英語の講座など、学ぶためのサポートは通常の企業以上に整えています。ただそれ以前に重要なのは「コミュニケーション能力」です。「自分が何を話せるか」だけではなく、「相手が何を欲しているかを感知し、問いを立てる感受性」を持っていることが大切になります。英語であれ日本語であれ、語学力以上にこの「コミュニケーション能力」のある方を求めています。なお、国内プロジェクトも多くありますので、英語に自信のない方でも活躍できるフィールドは十分にあります。

Q:国外プロジェクトにおける駐在の在り方も変わってきているとお聞きしました
以前は駐在する国により、ハードシップという点から、駐在時の休暇サイクルに長短をつけていました。しかし現在は、「どこにいても家族と離れている事実は変わらない」という考えから、場所を問わず8週間の現場勤務ごとに一時帰国ができるサイクルに統一しました。
ワークライフバランスという言葉がありますが、日揮では「仕事か私生活か」という対立構造ではなく、「ライフのなかにワークがある」という「Work In Life (Win LIFE)」という言葉を掲げています。キャリア採用者の増加やライフステージの変化に合わせ、仕事の継続性と家庭生活を両立させることを重視しています。
デジタル技術の発展により現地に行く頻度は過去に比べれば減るかもしれませんが、それでも現場特有のダイナミックな課題を解決するには、物理的に現地に赴くことは依然として不可欠な要素であると考えています。
Q:最後に、日揮への転職を考えている求職者に向けて、日揮で働く醍醐味やメッセージをお願いします
もしあなたが「社会課題を本気で解決したい」と思っているなら、日揮グループは非常に稀有で、最適なフィールドだと思います。社会課題はどんなものでも複雑で、一人では決して解決できません。志をともにする仲間と信頼感をベースにスクラムを組み、多国籍なチームで知恵を出し合っていく。
私はよく、社員を「帆船(ヨット)」に例えます。仕事をしていると、必ず向かい風が吹きます。困難な局面ばかりです。しかし、向かい風であっても、帆の張り方を工夫すれば、船は前に進むことができます。
ただし、その帆を支えるための「マスト(自分自身の軸・多層的な経験)」がしっかりしていなければ、風に耐えられず破損してしまい進めなくなります。自分の軸を大切にしながら、利他の精神で新しい風を受け入れ、前に進んでいく。そんな気概を持った方は、臆することなく、何の心配もせずに飛び込んできてください。
迷わず来いよ、来ればわかるさ!
文:佐藤 将人(アンドプロ編集部)/撮影:酒井 悠一(アンドプロ編集部)
日揮グループ 関連情報
数字で見る日揮グループ
世界を股にかける圧倒的な実績と、社員を支える充実した環境
- プロジェクト遂行実績:世界80か国で20,000件以上
- LNGプラント建設シェア:生産量ベースで30%以上
- 平均勤続年数:14.1年(従業員平均年齢:42歳)
- 有休消化率:70.0%(年間平均有休取得日数:15日)
- 柔軟な働き方:フレックスタイム制度(コアタイム10:00〜15:00)
- 育児や介護と両立するためのファミリーケア制度
- 配偶者の転勤帯同等による退職・休職から復帰できる「Welcome Back制度」
※働き方の各種データは2023年度(もしくは2024年3月)時点のもの
Q:数あるエージェントの中で、アンドプロへの評価を教えてください。
プラント業界は世間一般から見るとまだまだマイナーな業界であり、業務内容もなかなかイメージしづらい点も多いかと思っています。アンドプロさんにはプラントを専門に担当されている方もいらっしゃり、弊社や業務内容についてもわかりやすく候補者に伝えていただいているように感じています。 ご本人の志望度や意向、状況をよく把握されていて、それを踏まえた選考調整をしていただいています。きめ細かい対応に感謝しております。
Q:弊社の担当者との印象に残っているエピソードややり取りはありますか?
弊社は事業分野も多岐にわたり、求人数も少なくはないのですが、すべての求人の背景や特徴について一つ一つ詳細を確認いただいたことがありました。時間は多少かかった点はありますが、その後ご紹介いただける方とのミスマッチが減り、ありがたく思っていました。
Q:弊社経由で入社された方の定着や活躍についてはいかがですか?
求職者担当と企業担当が同じという両面型であり、弊社制度や社風の細かいニュアンスまで齟齬なく伝えていただいています。そのため入社後のミスマッチも少なく、納得感を持って入社いただいている方が多いです。
アンドプロの 3つ の強み

業界/職種専任のプロによる納得の支援
企業の"本音"をもとにあなたの強みを見出す
未来を見据えた本質的なキャリアサポート


