
首都圏を離れ“ユートピア”滋賀へ──最先端の半導体業界で“世界一”を狙う転職
かつては千葉から都心へ、毎日1時間の満員電車に揺られていた一人の開発者。コロナ禍をきっかけに自身のキャリアを見つめ直し、たどり着いたのは半導体製造装置で世界トップシェアを誇るSCREENでした。開発と製造が一体となった理想の環境、そして「世界一」を目指せる風土……。なぜ彼は新天地として滋賀を選んだのか。入社後のリアルな奮闘と、仕事のやりがい、そしてSCREENで働くことの真の価値に迫ります。
久保 雅裕(くぼ・まさひろ)さん
製品開発部・マネジャー
精密機器メーカーで製造プロセス開発を経験後、2008年に半導体製造装置メーカーへキャリア採用で入社した後、2024年にSCREENに入社。現在は装置開発における電気設計のスペシャリストとして、回路設計からコストダウン、安全規格対応まで幅広い業務を担っている。
「答えのない世界」で、世界一の装置を生み出す
Q:まず、久保さんの現在のお仕事について教えてください。非常に専門的な分野だと思いますが、わかりやすくいうとどのようなことをされているのでしょうか?
私は半導体を作るための「洗浄装置」という機械の電気設計を担当しています。半導体は、ウエハーと呼ばれる円盤状の材料にさまざまな処理を施して作られますが、その工程で欠かせないのが「洗浄」です。私たちの装置は、その洗浄を担っています。
現在は、15名ほどのチームを率いるディレクターのような役割も担っています。メカ、エレキ、ソフトウェア、そしてプロセス(薬液処理)など、各分野の専門家たちと連携しながら、新しい装置の開発プロジェクトを進めています。

Q:開発にはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
ゼロからまったく新しい装置を開発するとなると、3年ほどかかります。ただ、既存の装置をお客様の要望に合わせて改良したり、私たちが開発した新機能を搭載したりする場合は、1年以内で世に出すこともありますね。
私自身、入社して半年ほどで新しい企画を立ち上げ、その製品が今まさに、お客様のもとへ届けられようとしています。やはり1年半くらいはかかりました。
Q:まさに年単位のプロジェクトですね。SCREENの仕事の面白さ、そして難しさはどんなところにありますか?
この仕事の最も面白いところは、「答えのない世界」で新しいものを生み出せる点です。私たちのお客様は世界トップの半導体メーカーですが、そのお客様自身も、次にどんな技術が必要になるか、明確な答えを持っているわけではありません。
「こんなことを実現したい」という漠然とした要望に対して、私たち専門家が「それなら、こんな技術はどうですか?」と提案し、一緒になってゴールを探していく。誰も通ったことのない道を、お客様と二人三脚で切り拓いていくプロセスは、非常にエキサイティングです。
ただ、それ故の難しさもあります。変化が非常に激しい業界なので、「昨日決まっていた仕様が、今日になったらまったく違うものになる」なんてことは日常茶飯事です(笑)。ちゃぶ台返しされることも珍しくありません。そこで一喜一憂していては、心が持ちませんね。「またか」と淡々と受け止め、どうすれば最適解を導き出せるかを考え続けるタフさが求められます。

「このままでいいのか?」コロナ禍で芽生えた、開発屋としての本音
Q:そもそも、転職を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか?
明確に「会社を辞めたい」という強い不満があったわけではないんです。きっかけは、本当にコロナ禍でした。
前職はSCREENと同業種の関東の会社で、千葉の自宅から都内まで、15年間ずっと1時間ほどの満員電車に乗って通勤していました。それが当たり前の日常だったので、当時は何も異常だと思っていなかったんです。
ところが、コロナ禍で在宅勤務が始まったら「なぜ自分はあんなに大変な思いをしていたんだろう?」と我に返ってしまって。1日2時間以上を通勤に費やし、心身ともに疲弊する。これをあと20年も続けるのかと考えた時に、「自分の人生にとって、これは本当に必要なのか?」とぼんやりと疑問に思ったのが最初のきっかけです。

Q:多くの人が共感するお話だと思います。生活面の変化が大きかったのですね
ええ。そしてもう一つ、仕事面での気づきもありました。在宅勤務が中心になり、開発者なのに装置に触れない時間が増えたんです。私にとって、自分の手で装置に触り、アイデアを試し、現象を確かめるというサイクルこそが仕事の喜びなのだと、その時改めて気づかされました。自分のなかの「開発屋」としてのコアな部分が、うずき始めた感覚です。
前職の会社に大きな不満があったわけではありません。ただ、「この会社でなければならない理由もないな」と。そう思って、少しまわりを見てみようかな、というのが正直なところでした。
転職の決め手は「人」と「環境」。滋賀は“日本のユートピア”だった
Q:転職活動はどのように進められたのですか?
転職サイトに登録したところ、アンドプロさんからすぐに連絡がありました。いくつかエージェントとやり取りしましたが、レスポンスが圧倒的に早く、やり取りも丁寧だったので、信頼できると感じましたね。
私が企業選びで唯一、絶対条件として伝えたのが「開発拠点と製造拠点が一体であること」です。前職では拠点が離れており、量産の現場が見えづらいことにもどかしさを感じていました。自分の設計したものが、実際にどのように作られ、現場の人が何に困っているのかを肌で感じたかったんです。
それをアンドプロさんに伝えたら、その日のうちにリストアップして、何社も持ってきてくれたんです。その早さも信用につながりましたね。

Q:その条件のなかで、最終的にSCREENを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
一番は「人」ですね。SCREENには「カジュアル面談」という場があり、そこで現場の課長クラス3名と、お互いの課題や技術について1時間ほど深く議論することができたんです。すぐに意気投合しました。ここで働く人たちの人柄に、強く惹かれたのを覚えています。
そしてもう一つ、自分のキャリアがこの会社で「武器」になる、と確信できたことです。同業とはいえ、私が持っている技術はSCREENの誰も持っていないものでした。自分のフィールドで戦える。それは、ミドルキャリアの転職者にとって大きな安心材料でした。
Q:とはいえ、千葉に持ち家があったなか、まったく知らなかった「滋賀」への移住は大きな決断だったのでは?
滋賀はまったく知らない土地でしたので、最初に戸惑ったのは事実です。ですが、調べてみると印象は一変しました。京都、名古屋、大阪といった主要都市に1時間程度でアクセスできる。国道沿いにはお店が立ち並び、生活に不便はない。それでいて、東京の半額で家が買える。災害が少ないというのも魅力でした。妻とも「ここ、日本のユートピアじゃない?」と話したくらいです(笑)。結果的に、何の不安もなく移住を決断できました。
「よそ者」から「頼れるリーダー」へ。信頼を勝ち取った戦い方
Q:華々しいキャリアをお持ちですが、入社後に苦労した点はありましたか?
もちろん不安だらけでしたよ。いきなり年上の自分が上司としてやってくるわけですから、メンバーが警戒するのは当然です。自分の技術が通用しない「アウェイ」な環境で、どう信頼を勝ち取るか。そこが一番の課題でした。
まず徹底したのは、プレイヤーとして成果を出すことです。口で言うより先に、まず自分が動いて「こいつは口だけじゃない」と行動で示す。その上で、自分の得意なフィールドで戦うことを意識しました。
例えば、一つの技術を深く追求しているスペシャリストには、コスト削減といった別の視点を私から提供してあげる。逆に、経験の浅いメンバーには、実際にやってみせて「こうすれば大幅に時間短縮出るんじゃない?」と具体的に示す。そうやって、少しずつ信頼関係を築いていきました。
Q:周囲を巻き込む上で、ほかに意識していたことはありますか?
どんなに自分の考えに自信があっても、必ず上司に「これからこういうことをやりたいので、こういう方向に進もうと思っています」と報告・連絡・相談することは徹底しました。独断で動いて「やっかいなヤツ」だと思われたくなかったんです。それを意識していれば、組織のなかにはすんなりと溶け込めると思います。2年目の終わり頃には「君が言うなら、やってみよう」と、信用してもらえるようになったんです。

ひとりひとりが“ベンチャーの社長”、若手活躍の風土も
Q:実際に働いてみて、SCREENはどのような会社だと感じますか?
言われたことだけをやりたい人には、正直厳しい環境だと思います。先ほどお話ししたとおり、ここは「答えのない道」を自ら切り拓いていく場所だからです。ですが、裏を返せば、年齢や役職に関係なく、若手でもどんどん中心人物として活躍できる。SCREENは巨大な会社ですが、その実態は「製品ごとのベンチャー企業の集合体」だと考えてもらうとわかりやすいかもしれません。それぞれの開発プロジェクトが、一つの独立した会社のようなんです。
だから、年齢や社歴は関係ありません。20代や30代前半の若手が、まるでベンチャー企業の社長のように中心人物となって、ゴリゴリとプロジェクトを動かしている。そんな光景が社内の至る所で見られます。若いうちから裁量権を持って、自分の手で事業を動かしていく。そんな手触り感を求める人にとっては、最高の環境だと思いますよ。
これは持論ですが、成長している企業は、仕事の半分以上が「昨日まではなかった新しい仕事」なんです。誰かが「こんなことをやってみたら面白いんじゃないか」とアイデアを出し、まわりが「いいね、やろうぜ!」と乗っかっていく。決まった作業の比率が少なく、常にクリエイティブな挑戦が求められる。SCREENは、まさにそんな会社ですね。
Q:最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします
私にとってのプロフェッショナルとは、「人のせいにしない人」です。どんな状況でも、一度自分事として飲み込んでから動く。そうすれば、まわりは必ず見てくれています。転職も同じで、「今の環境が嫌だから」というネガティブな理由だけだと、次の場所でも同じ壁にぶつかるかもしれません。自分が何をやりたいのか、どんなプロとして生きていきたいのか、というポジティブな軸を持つことが大切だと思います。
私の原動力は、昔から変わらず「世界一のものを作りたい」という、ただそれだけです。装置は、誰かの「こうあるべきだ」という強い“ エゴ”の結晶だと私は思っています。そのエゴを突き通す責任を負うからこそ、面白いものが生まれる。これからも自分のエゴを装置に注ぎ込み、誰も見たことのないものを、この場所で生み出していきたいですね。
文:伊藤 崇浩(アンドプロ編集部)/撮影:長友 春佳
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