社員はもはや召使い!?家族経営の会社で実際に起きたブラック事件簿
「社長の家族が仕事もしないで高給を取っている」「親族が結託してやりたい放題」…。家族経営と聞くとそんなイメージを持つ人もいるかもしれません。
年間5,000件以上の労働相談に関わっているNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんに、家族経営の会社で本当にあったブラックエピソードを聞きました
ケース1|創業社長の引退後、二代目がやりたい放題の建設会社
解説|家族経営の会社は社長交代のタイミングが危ない
今野晴貴さん(以下、今野):家族経営の会社の場合、二代目社長になった途端、職場の雰囲気が一気に悪化することがあります。
自ら事業を立ち上げて会社を経営してきた創業社長であれば、現場の苦労も知っています。ところが、何の苦労もなく会社を引き継ぐことになった二代目の中には、甘やかされて育ち、現場の苦労を知らないどころか、自分は偉いから何をやってもいいとか、気に入らない社員は切り捨てていいと考えている人さえいます。
しかも能力よりも血縁優先で後継者になったため、本当に会社を経営していく能力があるのか不安なケースもあるのです。
そのような人が会社を継いでも、従業員と良好な関係が築けるはずはないですし、会社の経営そのものが危うくなってもおかしくありません。

もちろん、二代目社長がすべてそのような人ばかりということではありませんが、家族経営の会社は社長の交代期が要注意と言えるでしょう。
パワハラを受けるなどした場合には、迷わず個人加盟の労働組合や労働者側の弁護士など、労働問題の専門家に相談してください。未払いの残業代などがある場合には、その支払いを受けることができるはずです。
ケース2|社員を使用人のように扱う運送会社
解説|家族経営は「密室」。洗脳されないよう要注意
今野:家族経営の会社で働く人が特に注意しなければならないのは、その会社の内部だけで語られる「密室の論理」に取り込まれないようにすることです。
特に注意が必要なのは、新卒など就業経験がほとんどないまま、こうした会社に入社した場合です。社会経験が浅い人が、家族経営の会社内だけに通用するいびつで独善的な論理を何度も繰り返し刷り込まれると、いつの間にか「これが常識」だと信じて疑わなくなってしまうのです。

一度そうやって洗脳されてしまうと、そこから自力で抜け出すのは困難です。なぜなら、その状態こそが当たり前で、何の問題もないと思っているからです。そうなると、過労で心身を壊したり、何か事件や事故が起きたりして第三者が介入しない限り、状況を改善するのは難しいと言わざるを得ません。
家族経営の会社の論理に取り込まれないようにするには、最初に感じた「あれっ、なんか変だぞ……」という違和感を大切にすることが大事です。少しでもおかしいと感じたときは、メモを取るなどして記録を残しておくようにしましょう。
ケース3|経営者親子の食いものにされた社会福祉法人
解説|親族が結託して不正を行うケースもある
今野:これは会社を私物化している典型例です。私の見た限りでは、保育や障害者支援などの福祉業界は家族経営のブラック企業が多いように感じています。
よくあるのは、ケース1で紹介した建設会社のように、二代目、三代目と親族が経営を継ぐことで、ブラック化していくケースです。創業者は高い志を持って事業を立ち上げたものの、代替わりが進むとその理念を見失ってしまうのかもしれません。
このケースの他にも、姉妹で経営する保育園が自治体から合計2,000万円以上の助成金を不正に受給し続けていた事例があります。助成金の横領です。不正に気づいた自治体が返還請求を行ったところ、その保育園はいきなり閉園になりました。

家族経営で経理を親族が担当していると不正なお金の流れがあっても、それが見過ごされやすいと言えます。むしろ経理担当も結託して助成金の不正受給などを行うケースもあるのです。
Cさんが被害に遭った認可外保育園のケースでは、理事長である母親とその娘が結託して保育園を私物化したと言えます。地域の労働組合に相談したCさんは、弁護士を通じて未払い給与の支払い請求を行い、無事に支払ってもらうことができました。
ケース4|院長の妻がパワハラ。スタッフが次々に辞める病院
解説|名ばかりの役職で高給を取る親族も
今野:医療も家族経営の弊害が出やすい業態です。医師という職業はいまだに世襲が多く、個人経営の病院は「大先生」から「若先生」に引き継がれることがほとんどで、第三者が介入しにくいと言えます。
また、個人経営の病院では院長が絶大な権力を握っており、かつ、周りの看護師や患者さんから「先生」「先生」と崇め立てられるため、「自分はエラい」と勘違いしてしまう人も多いようです。
Dさんが勤務していた内科クリニックでは、院長よりもその妻が絶対的な権力を持っていました。誰よりも高い給料を取りながら、理事長とは名ばかりで病院内を見回ってスタッフを監視する以外には仕事らしい仕事は一切しなかったといいます。
この病院に限らず、家族経営のブラック企業では「経営者の親族が働きもしないで高給を取っている」例が多くあるようです。しかも、ただ働かないだけでなくパワハラまでしていたら、真面目に働いている従業員が不満に思うのも当然のことでしょう。
そのようなところで働くことはおすすめできませんが、少しでも状況を改善したいと考えるのであれば、地域の労働組合に加入して給与引き上げの団体交渉を行うことができます。
おかしいと感じたら専門家に相談を
今野:家族経営の会社は第三者が介入しづらく、親族が結託して労働者を搾取する、不正行為を行うといったことが起こりやすいと言えます。
また、不当な扱いを受けていても、「会社とはこういうものだ」「これが普通だ」と思い込まされて洗脳されてしまうケースが少なくありません。
何かおかしいと感じることがあっても、賃上げなどを求めて会社と個人交渉するのは難しいことですし、労働問題を個人の力で自分に有利な形で解決するのはほぼ不可能です。迷わずに労働問題の専門家に相談することをおすすめします。私たちNPO法人POSSEにも気軽にご相談ください。
取材・文/盛田栄一

1983年仙台市生まれ。一橋大学大大学院社会学研究科博士課程修了。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。『ブラック企業』で2013年流行語大賞トップテン受賞。著書に『ブラック企業−−日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)など多数。
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