
「大林組受けたら?」職人さんの一言から始まった、大型プロジェクトの現場監督への転職
900人の職人さんとともに、解体から新築までを手掛ける大型プロジェクトの最前線に、伊賀太郎さんはいます。彼がスーパーゼネコン・大林組の社員になったのは、3年前のことでした。当時、前職でもどかしさを抱えていた伊賀さんを突き動かしたのは、現場の職人さんの熱い言葉でした。伊賀さんはどのようにして、キャリアを劇的に変えたのでしょうか。
伊賀 太郎(いが・たろう)さん
工事事務所 主任
2022年に大林組に経験者採用入社。物流施設の施工管理を経験の後、現在は、国内大手金融機関の本店を建て替えるプロジェクトに従事。

24階建ての建物を”壊しながら創る”。前代未聞の解体プロジェクト
Q:まず、伊賀さんの現在のお仕事について教えてください
今は、国内大手金融機関の本店を建て替えるという、非常に大きなプロジェクトに携わっています。私の担当は、地下部分の解体工事です。今回は「逆打ち工法」という特殊な工法が採用されていて、既存の建物を壊しながら、同時に新築部分も造っていくという難易度の高い仕事です。

Q:壊しながら創る、ですか
ええ。外壁の一部を残しながら内部を壊し、新築の鉄骨を組み立て、それを利用して外壁を突っ張りながら、地下階の解体、鉄骨の組み立て……と解体と躯体工事を進めていきます。ただ壊せばいいというわけではなく、新築の知識がないと解体はできません。どの順番で、どう壊せば安全で効率的なのか。緻密な計算とノウハウが求められる、奥の深い世界です。
―― プロジェクトの規模もかなり大きいと伺いました
そうですね。前職では15億~25億円規模の案件が中心で、現場にいる職人さんの数も、前職では多くても数十人でしたが、今はピーク時で900人にもなります。朝礼の光景は壮観ですよ。やることは同じ施工管理ですが、動かす人やモノの規模がまったく違います。
「悔しかった」の一心で。職人さんの言葉が、転職の原動力に
Q:そもそも、転職を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか?
前職で働いていた7年目くらいの頃ですね。当時、予算の都合で効率的な工法が取れず、もどかしい思いをすることがよくありました。そんな時、現場に来ていた大林組の仕事を知る職人さんから、「こんなやり方じゃダメだ」「もっとこうすれば早く安全にできる」と指摘されたんです。それが、ただただ悔しくて。同時に、スーパーゼネコンのやり方ってどうなってるんだろう、と強く興味を持つようになりました。

―― 悔しさが原動力になった、と
はい。それから、現場で出会うさまざまな職種の職長さんたちに「伊賀くんなら、大林組、行けるって。受けてみろよ」と、何度も背中を押してもらったんです。
Q:なぜ、そこまで職人さんたちに信頼されたのだと思いますか?
特別なことはしていません。ただ、「自分が職長だったらどうしたいだろう?」と、常に相手の目線で考えるようにはしていました。「ここに足場が欲しいだろうな」「ここから作業を始めたいだろうな」と想像して、先回りして準備しておく。職人さんに真正面から向き合って、困っていることを聞き、一緒に解決していく。その姿勢を、見てくれていたのかもしれません。
その言葉を胸に、「絶対に今年、1級建築施工管理技士の資格を取って、スーパーゼネコンに挑戦する」と決意しました。
覚悟を決めた決意に、担当者は最後まで伴走してくれた。
Q:転職活動はどのように進められたのですか?
実は、転職エージェントである「アンドプロ」さんとの付き合いは長いんです。まだ20代半ばの頃に、軽い気持ちで登録したのが最初でした。当時は本気で考えていなかったのですが、担当のコンサルタントが定期的に連絡をくれて。「伊賀さん、こんな案件が出てますよ」「そろそろ1級の資格、考えてみませんか?」と、ずっと気にかけてくれていたのが印象的でした。
―― 長い時間をかけて関係性を築いてこられたのですね
ええ。そして、いざ「絶対に今年資格を取って転職します」と腹を括って伝えたら、そこからの動きは本当に早かった。「わかりました、じゃあ時間がないので、すぐに履歴書を作りましょう!」と、一気にトップギアが入った感じでした。
Q:具体的には、どのようなサポートがあったのでしょうか?
自分一人で書いた職務経歴書を、「もっとこういう経験をアピールした方がいい」「大林組の面接官は、こういうポイントを見ています」と、プロの視点で細かく添削してくれました。特に助かったのが面接対策です。「大林組なら、こういう質問をされる可能性が高いので、準備しておきましょう」といった、具体的なアドバイスをくれたんです。
1級建築施工管理技士試験の結果が出るのが2月で、そこからすぐに行動を開始して、5月にはもう内定が決まっていました。あのスピード感は、担当の方が私の強みや性格を深く理解し、最善の準備をしてくれたからこそ実現できたものだと感じています。

900人の職人さんを取りまとめる”コミュ力”の正体
Q:実際に入社してみて、いかがでしたか? 未経験のことも多く、苦労されたのでは?
はい。前職で経験してきた「鉄筋コンクリート」と、大林組で初めて本格的に担当した「鉄骨」は、例えるなら野球とクリケットくらいルールが違うんですよ。使うCADソフトもまったく別物で、最初は簡単な図面を描くのにも苦労しましたね。
でも、30歳を過ぎていましたし、知らないことを恥ずかしがっている暇はありません。「経験がないので教えてください」と素直に先輩に頭を下げ、参考書を読み漁り、とにかく実践で無理やり慣れていく。それしかありませんでした。
Q:大林組のカルチャーはいかがでしたか?
経験者だからと特別扱いされることは一切なく、ごく自然に一人の社員として迎え入れてくれました。試用期間中から責任ある仕事も任せてもらえましたし、現場は忙しい時ほど冗談が飛び交うような、風通しの良い雰囲気です。
Q:多くの職人さんをまとめる上で、大切にしていることは何ですか?
いわゆる「コミュ力」が大事だと言われますが、それはただ明るく話すことではないと思っています。大切なのは、「相手の立場を想像し、相談し、話せる力」。いきなり「これやってください」と指示するのではなく、「こういう風にしたいので、協力してもらえませんか」とお願いする。
職人さんたちとも、休憩中に少しずつ話をして、顔と名前を覚えてもらい、関係を築いていく。その地道な積み重ねが、最終的に現場をスムーズに動かす力になると信じています。

目指すは「所長」。自分が手掛けた建物が、街の景色になる喜び
Q:最後に、今後の目標を教えてください
いつかは、現場のすべてを統括する「所長」になりたいですね。そして、これまで縁がなかった商業施設など、完成後に自分も利用できるような身近な建物を手掛けてみたいです。
自分が苦労して造った場所が、多くの人に使われているのを見るのは、きっと格別な喜びだと思いますから。
Q:これから転職を考える同業者の方へ、メッセージをお願いします
スーパーゼネコンと聞くと、その規模感に圧倒されてしまうかもしれません。でも、心配はいりません。職人さんひとりひとりへの向き合い方は、会社の規模が変わっても同じです。
これまでの経験で培ってきた、現場でのやり方を信じて、ぜひ挑戦してほしいと思います。アンドプロはそっと背中を押してくれると思いますし、大林組は、その挑戦を真正面から受け止めてくれる会社ですよ。

文:伊藤 崇浩(アンドプロ編集部)/撮影:番場 一浩
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